23歳女は10代のあの頃を懐かしく想う。

日常のお話

好きな乗り物

毎日の通勤には電車、隣町のスーパーまでは自転車、近所の景色を楽しむのであれば徒歩、遠くへ行きたいなら自動車。

このように、私たちの移動手段には多くの選択肢があります。

乗り物に限った話をするのであれば、私は自転車が好きです。

夏を走った自転車

高校生の頃。

私は学校まで自転車で通学をしていました。

片道30分。

大抵の人は20分程度で着く道のりだそうですが、のんびり進むのが好きな私は、誰かと一緒ではない限り自分のペースで進みます。

歩くのも自転車を走らせるのも、「速く」を求められると期待に応えるのは、なかなかにしんどいです。

大体は平坦な道ですが、学校までには緩やかな登り坂もいくつかあり、その中でも100メートルほどの登り坂には、毎回息を切らしていました。

特段、夏になると、当たり続ければ痛みまで感じるほどの太陽に照らされ、だらだらと汗をかきながらの通学を強いられます。

それでも、やっとのことで長い坂を登りきり、頂上に着くと、そこからは大きな橋が伸びています。

登りきった勢いのまま、橋を渡ろうとペダルを漕げば、橋の下から巻き起こる強い風に体温が攫われ、とても涼しく感じます。

大きな川の下流。

風とともに匂う、ほんのわずかな潮の香りが「夏」と「青春」を感じさせてくれるようでした。

眉毛を整えることすらほとんどなく、背伸びをして薄化粧をするクラスメイトを横目に、お菓子をボリボリ食べていたあの頃。

「若い頃のケアが後に響くんだよ!」
と、教えてくれた、私と同い年の若い友人に助言をされ、母の化粧水を拝借し、見よう見まねで塗ることもありました。

あの頃の私は若かったです。

肌も、体も、心も。

ぱんっ、と張った艶のある肌は友人に褒められる事も多く、大したケアをしていたわけでもないのに、得意気に見せびらかしていたような記憶さえあります。

自転車は、力強く吹く風に背中を押されるようにして、前へ前へと進みます。

(いつかこんな日を思い出して懐かしく思う日が来るのだろうか。)

そんなふうに、若さを噛み締めながら自転車を走らせた、十代の夏の一幕。

あの時の想像通り、私はあの頃を懐かしんでいます。

例に倣って未来の私は今日の自分を振り返ることになるのでしょう。

そしてその未来も、その先の未来の私が懐かしむことになるのだと思います。

おわりに

乗り物といえばアニメや小説なんかではタイムマシーンなるものがありますね。

過去も未来もひとっ飛び。

以前は、タイムマシーンなるものができる未来に、憧れを持ったこともありました。

ですが、しみじみと過去を思い出すことのできるようになった今。

過去のことを思い出し、感慨深い気持ちになれるのは、未来の特権であるべきだとも思う、そんな今日この頃なのでした。

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